ドアをゆっくりと開けて部屋を覗くと、千春は机にうつぶせになりながら、すやすやと寝ていた。
 疲れているのか、表情は険しくそして疲れているようだった。


 「千春………。」


 結婚してから、疲れきっている彼女を見る事が多くなってた。秋文は自分と一緒になることで彼女に負担になってしまってるのか、とも考えるようになっていた。
 千春は自分よりも他人を優先するところが強すぎる。
 きっと秋文がどんなに「甘えろ。」と言っても、なかなか出来ないのだろう。

 サッカーを辞めれば、彼女の負担は減るだろうか?いや、きっと変わらない。
 サッカー選手ではなくても、今度は会社の社長になる。別の事で忙しくなるのだろう。


 「おまえは、俺と一緒に居て幸せなんだよな?………時々不安になるよ。」


 秋文が寝ている千春の顔に触れる。
 指に雫が付いたの気づき、千春が泣いていたのがわかった。
 何か仕事であったのだろうか……?

 秋文は、彼女をゆっくりと抱き上げてから、頭に優しくキスをした。


 「俺が守ってやるから。………だから、無理だけはしないでくれ。」


 彼女に聞こえるはずもない言葉を呟きながら、秋文は彼女を抱き上げたまま寝室へと戻った。