「あ、あきぃふみぅ?」
 「………おまえは、俺の奥様なんだろう。なんで、そんなに自信がないんだ。結婚しても、俺のものじゃないのか?」
 「ふへ?」
 「ファンはファンとして、お前の同僚は、千春の職場の人間としてしか見てないんだ。おまえだけが、たったひとりの俺の奥さんで、特別なんだ。……結婚しても安心出来ないか?この同じ指輪をしていても、ダメか?」
 

 秋文はそう言うと、自分の左の薬指にあるシルバーの指輪にそっと口づけしながら、少し悲しげに話しをしてくれた。
 千春はつられるように、自分の左手を見つめる。そこには、キラキラの光る、秋文と同じデザインの指輪がはめられている。
 それを両手でギュッと抱きしめながら、千春は彼と同じように素直な気持ちを秋文に向けて話しをしようと決めた。

 「秋文を支えたいと思って頑張ってきたけど、頑張りすぎてミスしちゃったり、こうやった体調悪くしてかえって秋文に迷惑かけたりしてたよね。秋文は、無理するなって言ってくれたけど、頑張りたかったの………。頑張ってるはずなのに、空回りしてしまったから、自信がなくなって、あんな嫉妬をしたんだと思う。………本当に情けないよね。ごめんなさい、秋文。」
 「……千春。おまえは、俺に頼られると嬉しいか?」
 「うん。嬉しいよ、秋文の役に立ちたいよ。」
 「それは俺も同じなんだ。俺も、千春に頼られたい。役に立ちたいだ。………おまえが好きだから。」


 その言葉を聞いた瞬間。
 あぁ、この人を好きになったんだ。
 こういう彼だからこそ、惹かれて、好きになって、ずっと一緒にいたいと願ったのだ。

 無償の愛だけではない。
 2人の事を考えて、想ってくれる。
 
 彼を知る度にもっともッと好きになっていく、そんな風に千春は感じた。



 「ごめんね、心配かけて………私も、秋文が大好き。」
 「知ってる。だから、奥様は早く元気になってくれ。キスも出来ないなんて、辛いんだからな。」
 「……してもいいのに。」
 「今日は俺もおまえも我慢だ。」


 そう言って2人でクスクスと笑いあった。

 
 脱ぎっぱなしの服も、明日のご飯の準備も、洗濯や掃除も、今はそのまま寝てしまえばいい。
 明日、2人でやればいい。

 千春は、ホッした瞬間眠気に襲われて、彼の熱を感じる腕の中で目を閉じた。