そんな事を続けながら、千春はサッカーの試合がオフの間も、働き続けていた。
 そして、仕事の引き継ぎを終えて、自宅への仕事がスタートする直前には、千春はヘトヘトになってしまっていた。

 けれど、秋文の前や仕事中は気が抜けず、いつも笑顔で過ごすようにしていた。秋文も地方での合同合宿や日本代表の練習で忙しくしており、千春の助けを必要とする事が増えてきていた。
 特に、来年度は日本代表のキャプテンにもなった秋文は、練習だけではなくメディアにも出演するなど大忙しだった。

 彼が多忙になれば、千春も多忙になるのだ。
それでも、秋文がイキイキとサッカーをしていたり、サッカーの話しをしたりするのを見ていると、千春は頑張ろうと思えるのだった。




 そんなある日だった。  


 「今日は少し体が重いな……。」


 会社での仕事があと1日となったこの日は、手土産などを持って会社に朝早くから来ていた。

 しかし、どうも体調が悪かった。
 最後の日なのだからと、気合いで職場に来たものの、千春は自分のデスクに着くと、椅子に座りテーブルに顔をつけてぐったりとしてしまった。
 職場にくるだけで、疲労してしまったのだ。


 「ダメだ………そろそろみんな来るんだから、シャキッとしないと。」


 自分では、大きな声を出したつもりだった。けれども、実際は呟くような小さな声しか出ていなかった。

 立ち上がろうとした瞬間……ふらりと世界が揺れ、そして視界が真っ暗になった。
 「あぁ、倒れちゃう………。」そんな風に思ったのは一瞬で、倒れる前に千春は、ぐったりと意識を失ってしまった。

 その時に思い浮かんだのは、秋文の顔だった。


 「また心配かけちゃう…………。」

 千春の両目には涙が溜まっていた。