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 次の日。
 千春は、誰かに触れられている感覚を覚えて、眠たい目を擦りながら、目を開けた。
 まだ朝日が昇ったばかりなのだろうか。
 部屋にも、優しい光りが差し込んでいた。

 いつもは大きなベットで寝ている千春と秋文だけれど、今日はいつもと違う。旅館の小さなな1つの布団で肩を寄せて寝ていた。
 隣にひかれた布団はほとんど使っておらず、1つだけが乱れてしまっている。
 使い慣れない布団だけれども、何も違和感を感じないのはきっと隣に彼がいるからだと千春はわかっていた。

 
 「千春、起きたか?」
 「ぅん……おはよう、秋文。」
 「おはよう。」

 秋文はとても穏やかな表情で、千春の髪をすいていた。昨日の少し焦っていた表情とはまるで違う。

 普段も秋文の方が早く起きており、彼は朝食の前に自主トレをしていた。そのため、いつも早起きなのだ。その時間に起きてしまったのかな?と思いながらも、起きると隣に秋文がいる事がとても幸せだった。
 遠征も多い仕事なので、一緒に寝れないことも多いし、自主トレに行ってしまうと、千春が起きる時には大きなベットにひとりでいる事が多かった。
 休みの日だけは自主トレも後にしてのんびりしてくれるのが、千春にとって特別な日だった。

 今日はその特別な日なのだ。
 そう思いきり甘えたくなってしまう。