だって、聞こえなかったから!








「真端ーっ!」



「んー?」



昼休み、有村の大きな声がして、顔をあげる。



「昼飯食お」



「オッケー」



返事なんて、決まっていたも同然。



上機嫌で教室のドアを出ていく有村の後ろ姿を、お弁当箱を持ちながら追った。



「有村、今日はどこで食べるの?」



有村と昼食をとるのは、週に1回あれば多いほう。



滅多にないチャンスだけど、そのほうが心臓がもっていいかもしれない。



「えっと……中庭」



前回は昇降口の外の階段だった。



今回は、中庭らしい。



「中庭……って、いっぱいお花が植えてあるよね」



そういうと、「お前、花好きなのか」と返された。



「好きだよ?」



「ふーん」



あれ、素っ気ない返事。



いつもの小学生男子みたいなノリはどこいったのかな?