それからは、いつもより2本はやい電車に乗るようになった。



そうすると、有村と同じ時間だから。



有村と同じ時間に昇降口に着くし、有村と一緒に教室に行けるし、有村とふたりきりの教室での時間が待っているから。



高校2年生になって、クラス替えがあった。



それでも同じクラスになれたから、喜びが大きい。



いっぱい、アピールするようになった。



隣に並べるような存在になりたくて、早起きを心がけたし、有村みたいに、たくさん笑うようにした。



笑いたくなくても笑うわけではないけれど、有村が心からの笑みを出すのと同じように、私も、感情を表に出すようになった。



高校1年生の秋に、有村と話したあのときから、感情がコロコロ変わるし、表情や行動に出るようになったんだ。



……でも、まだ覚えてる。



有村があの日、読んでいた本は、口にした“身長”にまつわるものじゃなくて。



……“恋愛”がうまくいくという、『恋愛が上手な男子がやっていることまとめ』という本だったこと。