だって、聞こえなかったから!




まだ足元にあるお弁当箱が、私の心のように、ぼんやりしてみえた。



ちょっと、もやもやする。



私、有村が好き。



……でもね。“付き合う”って素直に返せない。



「……待ってよ、まだ、無理。



付き合えない」



そういうと、有村は眉を下げて、悲しそうに笑った。



「そっか。



じゃあ、昼飯食おうな」



そそくさとした動きと言葉が、私の心臓の音を加速させる。



ドクドクとした痛みが、全身を駆けめぐる。



「違うの……っ!」



背を向けて歩き出す有村を、両手を使って、ぐっと抱きしめる。



「……え?」



困惑する有村をみたけど、さらにぎゅっと、抱きしめる。