恋しくば


駅で立ち止まると、辻本も止まった。

「今日はここで。レポートに付き合ってくれてありがとうね」
「何もしてない。送っていく」
「辻本が居なかったら終わってなかったから」
「じゃあそれに免じて送らせてくれ。俺がそうしたい」

結局折れるのはあたしだった。駅を抜けてあたしの家まで街灯の明かりを辿ると、辻本がアパートを見上げる。

「引っ越さないのか? って言いたいんでしょう」
「なんで分かったんだ」
「百鳥にも同じこと言われたから。稼いでるなら引っ越せばって」
「全く同じことを思ってた」

いやいや、住んでみれば意外に快適で。と紡いでも、全く響いてない様子。