恋しくば


世の中にノンフィクションという物語がないのと同じみたいに。

「だから! 辻本には幸せになってもらいたい」
「接続詞がおかしい気がする」
「細かいことは気にしない。たくさん肉食べて」

届いたトングであたしも肉を焼く。

お会計を終えて、外に出ると辻本が立っていた。
ごちそうさま、と声が落ちてくる。いやそんな、食べ放題としては普通の値段だ。

夜空にやっぱり星は見えなかった。駅へと歩いていく。

「うちの地元、雪がたくさん降るとこなんだけど」
「緒方の方じゃないのか?」
「あ、高校は緒方なんだけど、それは下宿してたんだ。実家はもっと北の地方」