恋しくば


前に百鳥が来て「スパイの部屋みたい」と言われた。物が最低限なのがそう感じさせるらしい。あたしはスパイの部屋を見たことがないので知らないけれど、百鳥が言うならそうなのだろう。

「もしもし、大丈夫?」
『大丈夫だよ、そんな心配しなくても』

電気を点けるより先に電話をかける。出たのは弟だった。

『母さん、今は寝てるし』
「分かってる。来週末には帰るから」
『帰ってくるのはいいけどさ……姉さん何考えてんの?』

さすが我が弟。あたしが何かをしようとしているのを、感じ取っているらしい。

「何って?」
『そんな心配しなくて大丈夫だよ。うちはずっとこんな感じじゃん』