そういえば! と丸尾さんがまた顔を出す。
その動きが余りに俊敏だったので、思わずそちらを二度見してしまった。
「うん?」
「葛野さん、バイト辞めるって本当ですか?」
「あー、うん」
「なんで? まだ就活でもないのに」
「違うの探そうかなって」
濁して言う。あたしは辻本みたいに何もかも正直に話すことができない。
正直に話すって、自分が強くないとできないことだ。
「さみしいなー」なんて定型文を送ってくれる丸尾さんに「ごめんねー」と定型文を返す。寂しくてもあたしが辞めた後も丸尾さんは働き続けるだろう。



