いらっしゃいませー、と言いながら店内に出る。
でもきっと、辻本だってあたしのことをそのくらいに思ってるだろう。あたしがどこでどうなろうが、他人の事。
「葛野さん、今日一緒に来てた人誰ですか?」
隣の棚で品出しをしていた高校生の丸尾さんがひょこっと顔を覗かせた。なんて可愛いこと。
「彼氏さん?」
「大学の友達」
「超カッコいい人でしたね! やっぱり彼氏じゃないのかあ」
話しながらも、品出しの手は止めない。それは丸尾さんも同じだ。
その口調からも分かるように、あたしと辻本を恋人同士だとは傍から見ても思わないだろう。



