恋しくば


「そんな顔の良い辻本に可愛いって言ってもらえるなんてありがたい」
「本当にそう思ってる」

辻本は至極簡単にそんなことを言う。そういえば、辻本は正直者だ。
嘘はつかない。

「辻本は優しい」
「でも面白くはないんだろ」
「そんなに面白くなりたいなら、お笑い芸人でも研究したら?」
「なるほど」

神妙な面持ちで頷くので、止めた。いや、研究をして面白くなれるのなら、売れないお笑い芸人なんて存在しないはずだ。

「じゃあ葛野の好きなお笑い芸人を教えてくれ」
「えーあたし今の芸人よく知らないんだよね。子供の頃はビャッコっていう芸人が好きだった」