恋しくば


キャンパス内を歩くと、やはり視線を感じる。それも自分に対してではなく、隣へ注がれている。
なんとなくそれから離れるようにして、気持ち後ろの方へ移動した。

「辻本は、女子ふったんだって?」
「ああ」
「なんで? 美人なのに」
「顔は関係ない」
「関係ないもんなの? あたしは来世、出来たら美形に生まれたいけど」

てか、美人をふってみたいものだ。

「葛野は可愛い」

こちらを見て真っ直ぐ言われた。こうしてちゃんと顔を見たのは殆どなくて、改めて思う。

「辻本って本当に顔整ってるよね」

右の目元に泣きぼくろがあることを始めて知った。