恋しくば


確かに、男が王子でないことも馬にも乗れないことも大抵の女は分かっているだろう。

「もしかして辻本、好きな子が出来たんじゃない?」

閃いたあたしの言葉に、二人がハッとした顔をこちらに向ける。二人にもこの考えは無かったらしい。
教授が講義室に入ってくる。ざわざわしていた室内が静かになっていく。
上羽も前を向いて、百鳥もペンケースを取り出し始めた。

「え、どうして無視するの。ちょっと、ねえねえ」

二人とも答えてくれなかった。




とんとんと背中を叩かれる。覚醒して背筋が伸びた。
ここは、図書館。