恋しくば


「てか、葛野じゃなくてマコでーす」
「葛野の好きなタイプは?」
「葛野じゃない、マコ」
「誠」

不意に名前を呼ばれてどきりとする。久しぶりに誰かに名前を呼ばれたな、なんて。
名前よりも苗字に特徴があるので、親しくなった人は皆苗字の方で呼ぶから。

辻本だって例外じゃない。

「好きなタイプ……」

辻本と上羽の方を見る。
うん、まあ、とりあえず。

「普通のひと」
「……普通?」
「平々凡々なあたしには、普通の人がお似合いでしょ」

そう言ってみれば、上羽が少し肩を竦める。何を示しているのか分からず、辻本を見る。
何かは分からないけれど、何かを考えていた。