その埋まらない差を前に、あたしはいつも足を止める。そこから先には行けない。
だからいつも話をするときは、辻本や上羽がこちらに寄ってくれる。
「葛野」
「わ、びっくりした」
スーパーで品出しをしていると、辻本が現れた。これまたブランドの薄いコートを羽織っている。
「バイト終わりだったから寄った」
「そっか、お疲れ様」
「何時終わりだ?」
「もうちょいかな、なんで?」
「夕飯行かないか?」
品出しの手が止まる。夕飯、夕飯かあ……。
自分の財布の中身を考えてから、そういえば辻本には彼女がいたのだと思い出す。



