恋しくば


お弁当の蓋を閉めて、お茶を飲む。百鳥もスプーンを皿に置く。

「まあ危なくないなら良いけど……。カドって特待で返済義務無しの奨学金もあるんでしょう? そんなに稼ぐ必要あるの?」
「んー、あって悪いものじゃないし」
「てか、稼いでるなら早くあのボロアパート引越しなよ」

あー、と声が出る。一度だけ百鳥が来たことがあるうちのアパートは、オートロックなし鍵はひとつだけの築50年。
何より、めっちゃ家賃が安い。
あの家賃の低さに慣れてしまうと、他には住めない。住めば都とはいうけれど。