恋しくば


教務課から出ると、ばったり辻本に会った。
先程まで辻本の話をしていたのもあって、少し笑ってしまう。怪訝な顔をされた。

「ごめん、思い出し笑い」
「そうか。教務課に行ってたのか?」
「うん、奨学金の申請とか……いろいろ」

濁すような言い方が気になったのか、納得してない顔。でも尋ねられる前に、辻本の腕に絡みつく女が現れた。

「京平! 遅い!」
「ああ、悪い」
「何してるの?」

じろりとこちらを睨む長い睫毛。天然物でないことがひと目で分かってしまった。
その視線から、視線を外す。メデューサに睨まれるのは御免だ。