「そう?」
「葛野と一緒なら、何を見ても楽しい」
辻本が静かに笑った。その横顔に、その柔らかい唇の動きに、あたしは恋をした。
この恋があたしをどこへ連れて行ってくれるだろう。
今はまだ分からない。
これから家に帰って家族にこれからの話をする。どうするのか、どうすべきなのか。
きっと辻本も付いてきて、初対面でうちの家族を驚かせてつつも意見を言うのだろう。
それが目に見える。
ただそれは今の推定の話で、それはあたしの推測に過ぎない。
同じように辻本の気持ちだって、バスに乗っている間に変わってしまうかもしれない。



