恋しくば

 
辻本は楽しい思い出話を語るように、柔らかい表情をしていた。

「あたしは、辻本の第一印象結構悪かったけどね」
「え」
「お金持ちで女とっかえひっかえしてる頭の良い人」

口を噤む。それは確かに友人たちからの噂を耳にしていたというのもあったと思うけれど、無かったとしても現実はそう変わらないだろう。

あたしは自分から、辻本と関わる気は全くなかった。
学部も違うし、上羽の従兄弟という認識。

「……最低な人間像だ」
「普通に話すようになって、単に正直な男なんだなって方に変わったけど」

だって蓋を開けてみれば、彼女にはよくふられているし、面白さを求めているし。