弟か、と辻本が言葉を漏らす。その意味は計り知れない。 これだけ完璧な辻本より優秀なお兄さんって、すごいな。 「今年、受験なの。高三」 「こっちの大学を受けるのか?」 「……ううん。それがさ、受験しないって言い始めてて」 声が笑っていた。笑わないと、泣いてしまう気がしたから。 泣くようなことでもないけれど、感情の入っている容器からそれが溢れてしまいそうで。 「どうして?」 「んー……うちに金銭的余裕がないから?」 どろどろと心が溶ける、気がした。 ただ、それを直視できない自分がいる。