恋しくば


そうなのか、と納得した声が聞こえる。

「辻本は炊事洗濯してんの?」
「してるけど、料理は殆どしない」
「女子にしてもらってたんでしょう」

参考書に手を伸ばす。荷物になるとわかっていて、持って行ってしまう。
おりた沈黙に、我に返る。

「冗談だって、そんなに考えなくても」
「やって貰ったことはない」
「あ、そうなの」

何故かあたしが気を遣う結果となった。参考書をボストンバッグに詰める。

「葛野の料理を食べたのが初めてだ」
「え、あたし何か作ったことあるっけ?」

そもそも辻本を家に上げたのだってこれが二回目だ。