「……コレ何?」

千歩は率直に麻衣子に尋ねた。

蓋が閉まった丼ぶり。

セットでついてくるおしんことお吸い物に目が留まる。

「カツ丼に決まってるじゃない」

「どうしてカツ丼?」

「これから犬山容疑者の取調べを始めるから。取調べと言えばカツ丼でしょう」

「取調べって……」

千歩は何の冗談だと言わんばかりに苦笑を浮かべた。

そして、カツ丼を食べようと蓋に手を添える。

しかし、麻衣子は千歩の手をバッと上から抑え込んでその行動を止めた。

「まだダメ!」

麻衣子の整えられた眉がキッとつり上がる。

覚えの無い容疑と昼食のお預けに千歩は「えー……」と口を尖らせた。

それでなくとも、朝寝坊して朝食をきちんと食べられなかったのに、この仕打ちはあんまりだ。

「分かったよ……。それで、私は一体なんの容疑にかけられているのでしょう?」

千歩が仕方なく尋ねると、麻衣子は千歩の手から自らの手を離して「それは……」と勿体付けた風に語り始める。