「ただいま〜」
その時、明るく元気な声とともにこの部屋のドアが開いた。
「恭平に頼まれてた飲み物なかった…って、え?だれ?」
ドアが開き、入ってきたのは、背の低い赤髪をした男の子と、1人の女の子。そして、その後ろから、眼鏡をかけた黒髪の男の人が入ってきた。
「なんで、この子がいるの…」
女の子は、あたしの姿を見るなり、持っていたナイロン袋を落としカタカタと震え出した。
「唯花ちゃん?どしたの?」
男の子は、心配そうにその子に駆け寄る。
「唯?」
それに続くように、男の人もその子に声をかけた。
さっきまでの空気が一瞬で変わったのが伝わる。
「…唯花」
あたしも、彼女の名前を口にする。
さっきの男たちが言っていた、"霜華の姫"というのは、唯花のことだったんだ。
「えっと……知り合い?」
気まずい空気の中、声を出した男。
そういえば、名前知らないや。
「ううん。昔…ちょっとね」
落とした袋を拾うと、何事も無かったかのように、あたしの横を通り過ぎた。
「ねぇ、恭平みて。新作のお菓子見つけたの。味見する?」
彼女は、ソファに座る恭平くんにお菓子を見せ、嬉しそうに微笑む。
昔と何一つ変わらない彼女の優しい笑顔に、チクリと胸が傷んだ。