「……裕次郎さん。私は、どんなあなたでも、ずっとアイシテルわ」
男の頬に延びる痣だらけの腕。
少し高めの甘い声。
天使のような優しい微笑み。
あたしはママの"それ"を、知っている。
「…あず、き……」
あたしを見つめる男の瞳が、一瞬揺らいだ。
そう、この瞬間(トキ)を待っていた。
男がいない間に見つけ、こっそり体に忍ばせておいた折りたたみ式のナイフ。
チャンスは一度だけ。
「梓姫、やっと……その言葉を聞きたかったんだ。オレも君を愛してる。誰よりも、ずっと……」
あたしの唇に押し付けられる、男の冷たい唇。
女(あたし)が男の言いなりだなんて誰が決めたの?
夜はいつだってあたしの支配下。そうやって今まで生きてきた。
だから、今だけは、あたしが支配者に戻(な)ってみせる…────。
陽向くんの言葉通り、ママが犯罪者だと言うのなら、あたしだって同じ血が流れているんだ。
それが、共犯者(オヤコ)でしょ……?
一呼吸置くと、無防備な背中に、あたしは"それ"を振り下ろした。

