「最初はただの喧嘩で済むと思っていたから俺らだけでカタをつけるつもりだった。だけど、そうもいかなくなったんだよね」
「言いたくないことかもしれない。けど、俺たちは絶対に風華を許さない。やられた仲間の為に、何か心当たりがあれば教えて欲しい」
『…柚姫』
甘く囁かれるあたしの名前。
優しく触れた、蓮の唇。
甘くクセのあるタバコの香り。
もう、1年近く前のことなのに、まだあたしの中に残っている記憶。
初めて、あたしを必要としてくれた人。
初めて、心を許そうと思えた人。
初めて、男に対して抱いた感情。
だけど、形のない思いは簡単に消え去った。
「………あま」
沈黙が続く幹部室に響くあたしの低い声。
「やられたって、ちょっとケガしただけでしょ?たったそれだけで大袈裟すぎなんだけど、ウケる」
蓮への憎しみは、あたしが嘘をついてこの人たちを利用すれば簡単に晴らせる。復讐するには、絶好の機会。
だけど、どれだけ憎くても、あたしには蓮を傷つけることは出来ない。

