「外あちーよ。俺、シャワー浴びてくる」
「あっ、流牙ずり〜っ!次俺な」
一気に賑やかになる幹部室。
この人たちが帰ってきたということは、出かけることは不可能に等しい。
トロピカルマンゴーのシフォンケーキ食べ損ねた……。
「ところでさ、それなに?」
魅斗くんが指さしたのは、瞬くんの肩にかかった大きなバッグ。
「それ言うな。俺の大事な大事な"いろは"に」
瞬くんがバッグのファスナーを開けると中から1匹の猫が顔を出した。
「今日帰れそうにないし、家誰もいないから連れてきた」
「にゃあ〜…」
バッグから体を出すと、あたしの膝の上に乗るその猫。
体全体はクリーム色で、顔や耳、体の一部、尻尾の先がグレーをしている。
ターコイズブルーの瞳が宝石みたいですごく綺麗。
そして何より…。
「ふわふわぁあ〜…」
そっと体を撫でると、毛並みが綺麗でとっても触り心地がいい。
「ラグドールのいろは。たまにね連れてきてるんだ」
そっかぁ。いろはちゃんって言うのね。
「柚姫ちゃんが猫平気で良かった」
「平気っていうか、乙女の顔になってるけど」
外野が何か言ってるけど、気にしない。
もふもふ…。
……可愛い。
「後で話があるから、ここにいろよ」
ポンッとあたしの頭に軽く手を置いたあと、流牙くんは脱衣場の方へ姿を消した。