「え?そんなやついんの?きもいわ〜引くわ〜男のクズだわ〜」


「陽向は絶対にそんな事しないから大丈夫だよっ!信用していいからね。僕が保証するから」


…って、そう言われてもなぁ。



別に、陽向くんが薬使ってあたしを眠らせるとか疑っているわけじゃないよ。


そんなことしても、メリットないって分かってるもん。


だけど……


こればかりは……。



「柚姫」


その時、ずっと黙っていた恭平くんがあたしを呼んだ。



「今日買ったパン、買ったの陽向だよ」


その言葉に、口の動きが一瞬止まる。


ここに来た日、あたしはこいつらが買ってきたものは口にしないと決めていた。あ、恭平くんが買ったのは別だけど。

本人もそれを分かっているからこそ、あたしの夕飯を時々コンビニやスーパーで買ってきてくれていた。


だけど、最近は何故か、誰が買ってきたかも分からないパンを普通に……何も考えず、何回も口にしている。


あたしとしたことが……。

完全に迂闊だった。





「…でも、パンに罪は無いもん」


たとえ、陽向くんが買ってくれたものだとしても、このパン好きなんだもん。


全部食べたい……。


そして隣にある、ブラックチェリーのデニッシュも、食べたい。


「大丈夫って、自分で確かめられたでしょ。警戒しなくていいから、ちゃんと食べな」


「…恭平くんって、時々意地悪だよね」


多分、敢えて誰が買ってきたか言わなかったよ。


口の中に残っているパンを、もぐもぐ噛みながら、ソファに座って優雅に昼食をとる恭平くんを静かに睨んだ。