「ゆったんはもう霜華の姫じゃん。連絡先知らないってのは色々不便だと思うだ」
「あたしは特に困らないよ」
ここに来て、はや1ヶ月。
だけど、霜華の人と連絡が取れず困ったことは無い。
「ねぇ、ゆったんお願い。みんなには言わないから」
縋るように腰に回された腕。
程よく筋肉がついており、力もある。
そのため、この腕に捕まるとなかなか離れられない。
あぁ、もう…っ。
「…いいよ」
どうせ男用のスマホだし。
普段電源切ってるし。
先程切ったばかりのスマホの電源を入れようとすると「そっちじゃないでしょ?」と、膝の上で意地悪そうに微笑む魅斗くんと目が合った。
「僕、そっちのが知りたいんだけど」
と、指をさしたのは、プライベート用のスマホ。
このスマホに登録されているのは限られた人だけ。
「…絶対、他の人には言わないって約束できる?」
必要以上に、このスマホに連絡先を増やしたくない。
いずれ切れる人の連絡先なんていらないんだもん。
それに、めんどくさくなったらいつでも捨てられるように、最初が肝心だと思う。
「うん、約束する」
画面を操作し、QRコードを表示すると、魅斗くんがそれを読み込んだ。
「ありがと、ゆったん」
にっこり嬉しそうに微笑む魅斗くん。
それにつられるように、あたしの口元も僅かに緩んだ。

