「柚姫はテスト結果どうだった?」
恭平くんの言葉に「うん。良かったよ」とだけ返す。1週間授業には出なかったけど、その分勉強出来たし。
おまけに、優牙くんが教えてくれたところ全部出たもん。
「赤点プリンセス卒業おめでとう」
喜んでいい言葉なのか分からないけど、素直に受け取る。
「ありがと。魅斗くんも元気だして。これあげるから」
そう言ってカバンの中からフィナンシェを取り出し魅斗くんに渡す。
お昼休みにけいちゃんのところに行ったら、貰ったものだ。
テスト頑張ったご褒美だって。
「…ありがとう。ゆったん好き」
腰に手を回され、ギュッと抱きつく小さな体。
と言っても、あたしと比べたら大きいけど。
「…元気だしてね」
そう呟きながら、ふわふわの髪の毛をそっと撫でた。
柔らかい髪質で、触り心地も本物の仔犬みたい。
男の子なのに、可愛くて男らしさを感じさせない。だからなのか、魅斗くんには少しだけ心を許してしまう自分がいた。
「ゆったんの手、温かいね」
頭に置いたあたしの手に、そっと触れる魅斗くんの手。
そんなこと、一度も言われたことがないため、反応に困ったが、「落ち着くからもうちょっと撫でて」と、魅斗くんの甘い言葉にもう少しだけ、撫でさせてもらった。