「聞いたところで、本当の答え返ってくるとは思えないしね」
机に置かれた缶コーヒーを一口飲むと、冷笑を浮かべる。
陽向くんの目は、全てを知っている人の目。
あたしの言葉なんて1ミリも信用してないんだって感じさせる。
どこまで調べたの…?
どこまで知ってるの…?
「案の定親のことは全部嘘だった」
「なんのことか分からない…」
陽向くんの言う通り、あたしの言葉に真実なんてひとつもない。
だけど、ここで認めるわけにはいかない。
「シラを切るならそれでいい。俺は自分が調べた情報を信じる」
「…あたしには関係ないし」
こんなくだらないことに付き合ってられない。
部屋から出ようと思い、立ち上がり、ドアノブに手をかけた時、
「8年前、柚姫ちゃんの母親は殺人未遂の容疑者となった」
勝手に喋り出す陽向くんの言葉にドアノブを掴んでいた手を下ろす。
「被害者は柚姫ちゃんの父親。夫婦間のトラブルともされたけど、そんな単純な話じゃなかった」
「黙れっ!!」
2人だけの部屋に響く、あたしの叫び声。
ママが犯罪者であの男が被害者…?
………笑わせないで。
「…うるせぇんだよっ!」
棚の上に置かれた花瓶を手に取ると、中に入れられていた造花が床に落ちる。
何も知らないくせに…っ。
あたしは掴んだ花瓶を陽向くんの方に振り下ろす。
だけど彼は、いとも簡単にそれを避け、花瓶は勢いよく机の角にぶつかった。
ガシャンと音を立てて割れ、辺りに飛び散る破片。
「…いくら可憐な花を演じて偽っても、引きちぎれば簡単に本性出んだな」
氷のように冷たい眼で睨みつけられる。
あの時のあの男と同じ。
別人だって分かっていても、あの男と重なるのは、男なんてみんな同じだから。

