「…柚姫?」


後ろから名前を呼ばれる。


「ごめん、起こしちゃった?」


「平気。それよりこんなところいたら風邪ひくよ。部屋戻りな」


寝ていたせいか、いつもよりも低く聞こえる声。

恭平くんだって、あたしが霜華の姫になったら今までのようなカンケーは持たない。


元々あたしたちのカンケーに愛なんてものは存在していなかったのだから、当然といえば当然か…。




「そっちこそ、こんなところで寝てたら風邪ひくよ?」


「慣れてるから平気。ほら、戻るよ」



あたしの手を掴み、そっと引っ張る。




「あのさ」


「ん?」


「もうね…」


ドアを開け、部屋に入ろうとした時、



カタッ​────…



と、窓の向こうで音がした。




「なに、今の音…」


虫にしては大きすぎる。かと言って、鳥でもなかった。


ここは2階、人なんて考えられない。

だったら……。