「成長したなぁ」


すっかり大人になって…と年寄りくさい言葉を吐くけど、あんたもまだ三十代前半でしょ。


「あの子供だった葵ちゃんが彼氏と一緒とは。驚いたな」

「あの、これはね」


期間限定の彼氏ってやつでぇ…と説明したくてもし難い。


「葵、この人は?」

「え?」


葵!?


誰だそれ…と思わず彼を見直すが、彼が見てるのは当然私で。


(ああ、そうか。葵って私だ)


ついすっかり自分の名前が吹っ飛んでた。
でも、いきなり呼び捨てってどうして!?


「初めまして。僕は葵ちゃんの家の近所に住む幼馴染で、朝川駿(あさかわ しゅん)と言います」


ポカンとしてる私を差し置き、中学の教師をしてます…と名刺を出してくる朝川先生。

今泉君はそれを受け取りながら自分のポケットにも手を入れ、名刺を出したいところですが、生憎名刺入れを忘れてしまって…と、出したくでも出せない感じで悔やんでる。


「俺は医師をやってます」


宜しくどうぞ…と頭を下げ合う二人。

その姿を呆然と脇で見つめる私は背中に冷や汗を感じつつ、出来る限り早くこの場から立ち去りたい気持ちでソワソワした。