手袋越しに伝わってくる桜庭の少し大きな手。
「桜庭……、手離して」
「やだ」
私がお願いすると、桜庭は私の手をさっきよりも強く握りしめてきた。
それはまるで、私にどこにも行ってほしくないみたいに……。
「やだじゃなくて、私……」
「やだ。俺は絶対やだから」
まるでちいさな子どものように、駄々をこねる彼。
かわいい……、ってそうじゃなくて。
「桜庭、私はただ……」
手袋を外して、直でキミの温度を感じたいだけなんだよ……。
……とは言えないから、「手袋を外したいだけだから、一回離して」それだけ言おうと口を開いた次の瞬間──。
「……好きなヤツの手、誰が離すもんか」
ボソッと耳に届いたその声。
「え?」と聞き返すと同時に桜庭のほうを見下ろすと、彼もまた私のほうを見上げていた。
ふたりの視線が交わった次の瞬間、今度ははっきりと力をこめて告げられた。



