「岩倉さんは実家の店にはよく帰るのか?」

GMはサーファーに目を向けたまま尋ねた。

「それが全然。仕事が忙しいのに託けて随分長い間帰ってないんです」

「そうか」

そう言うと、GMは顎に手をやりしばらく何か考えているようだった。

そして、思い立ったように口を開く。

「君は明日も休みだろ?なんならこれからドライブがてら君の実家まで送り届けようか」

「え?」

この間、兄と話していたとき近々帰ろうとは思っていたけれど、いきなり今から?!

きっと急な帰省でも皆喜んでくれるとは思うけど、GMにうちまで送ってもらうなんてさすがに気が引けた。

「帰るなら電車で帰るので大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

とりあえず丁重にお断りしてみる。

「遠慮してるなら無用だ。俺も久しぶりにT町に行ってみたいと思っただけだから」

「久しぶり?」

そういえば、T町の話をした時、以前仕事で行ったことがあると話していたっけ。

「T町はとてもきれいな場所だったと記憶している。ドライブするには距離的にも丁度いいしね」

「よろしいんでしょうか?」

上目づかいでGMの顔を見上げた。

「もちろん」

GMは優しく微笑み頷いた。