『かな!起きろ。』
家にいるような気分で目を覚ますと、幸治さんが怒った顔で立っていた。
最近の幸治さんは、穏やかで優しかったのに…私が入院した途端に。
いつも入院したり体調崩すと、怒っている気がする。
『起きてご飯食べて、薬飲まなきゃダメだろ。』
一日寝ていたおかげで、頭がボーとしてしまう。
数日前まで何時間ものオペに立ち会っていたとは思えないほど、酷く眠い。
『ほら…』
リクライニングを上げられて、スプーンを持たされる。
食欲なし……。
ガッツリ盛られたごはんにおかず。
寝起きでこれはつらいな。
『聞いたぞ、今日はいきなりやらかしたみたいだな。』
やらかしたって……
『親父を困らすなよ。』
困らせてるつもりはないんだけどな。
「……ごめんなさい。」
なんだか謝るのが癖になってしまった気がする。早く謝れば、それ以上相手を怒らせない気もするし。
『別に謝られても。』
「だって、幸治さん怒ってるし。」
『怒ってないよ。』
いや、言い方も表情も怒ってるよ。
『とりあえず食べろ。食べなきゃ薬も飲めないし。』
「はい……。」
それから何とかして半分を食べ終えた時には、係りの人が食事を回収に来ていた。
『早く食べないからだぞ。』
「ごめんなさい。」
『いいから、薬飲んで。』
そう言われて薬を何度かに分けて飲んだところで、幸治さんは帰って行った。
何をそんなに怒ってるのかな。お父さんに何か言われたのかな。
「ゲボッ」
あれ、おかしいな。
「ゲホッゲボ。ゲホッゲボ。ゲホッゲボ。」
今までなかったのに、咳が出始めてしまった。
ここ最近、吸入は毎日してるし、薬も忘れてない。
それなのに、突然……咳が出始めた。
「ゲホゲホゲホゲホゲホっ!」
と大きく咳き込んで、深呼吸すると、治っていた。
なんだ、喘息の咳発作ではなさそう。
と安心するけど、一日寝てしまったので、全く眠れそうになかった。
これから消灯なのにな。
咳が出たせいで喉が渇いてしまい、いつもの自販機に行く。
早く帰らないと誰かに見つかったら、何か言われるのも嫌だと思い、足早に部屋に戻った。
「ゲホッゲボ。ゲホッゲボ。」
咳はまた出始めたものの、水を飲んで落ち着いた。
日付が変わった頃、目を瞑っているものの、なかなか眠れない。
何度も看護師さんが巡回にやってくるけど、その度に目を瞑って寝たふりをしてみる。
いつも眠れてるから知らなかったけど、巡回ってこんなに多いものなのかな。
なんて考えていると、
「ゲホッゲボ、ゲホッゲボ。」
喉が渇いたのか咳がで始めた。
「ゴボゴボゴボゴボ……。」
廊下に聞こえないように、布団を被ってなんとかやり過ごす。
うん……きっと大丈夫。
もう一度水を飲んで、ベッドに横になった。
それでも眠れず……結局眠りについたのは午前3時頃……。



