次に目が覚めると、カーテンから外の光が漏れていて、朝を迎えたことが分かった。
隣に幸治さんもいなければ、腕の点滴もない。
全く気づかないうちに外されてた。
体はすっかり軽くなって、起き上がっても目眩も怠さもない。
ゆっくり起きて、リビングに向かう。
ガチャ
部屋を開けると昨日と変わらないメンバーがそれぞれの場所で、私を振り返る。
『あ、かなちゃん、おはよう。
起き上がって大丈夫かしら?』
お母さんが一番に駆け寄ってくれた。
「はい、もうすっかり。
えっと…あの今日はみなさん、お仕事は……」
『休みだよ。だからみんなで泊まったんだ。』
とお父さんがソファに座るようにと招く。
『そうそう、病院に行っても俺が休みだから、朝からここで診ておこうと思ってたんだ。』
そ、そういうこと。
「色々とすいません……。」
招かれたお父さんの方へ行くと、隣に座らされ、大きな手が額を包む。
背中もしっかり手を当てられ、身体中の体温を感じて診断してるんだと思う。
『あら、回復早いね。
でも、今日は一日ゆっくりするんだよ。』
「はい。」
『病院には連絡しといたから。』
と幸治さん。
「あ、すいません。すっかり忘れてた。」
『たけるにもメールしといたから。』
「ありがとうございます。」
すっかり愛弟子となったたけるは、幸治さんの内通者だということを改めて思い出した。
『さあ、かなちゃん。朝ごはんにお雑炊作ったから。』
あ、朝ごはん……。
つい固まってしまう私に
『こういう時こそ食べないと、また今夜にでも熱が出るわよ。』
といつも間違ったことを言わないお母さん。お母さんが言うことは絶対というほど当たっていて…前にもこうしないとこうなるわよ……と言われたことをそうしなかったがために、酷いことになったことを思い出した。
その話は幸治さんとお父さんも知らないことなんだけど……。
「た、食べます。」
キッチンのテーブルに腰掛け、お母さんに出してもらったお雑炊を口に入れる。
お、美味しい。
いつもお母さんの手料理は美味しすぎて、普段食べられない量を食べてしまう。
『どうかしら?』
「ものすごく美味しいです。」
お雑炊をお茶碗に軽く二杯食べたところでやめておいた。
軽く二杯でもここ最近の朝食では、一番食べた気がする。
そんなことは私と幸治さんしか知らない。チラッと見ると、幸治さんもチラッと見た後だったのか、目線が私の方からテレビにうつる。
『よく食べてくれたわね。ありがとう。』
「ご馳走様でした。」
さあ、このお腹ですぐに薬が飲めるか……。
いつもの場所に置かれた薬箱をお母さんが持ってくる。
そう、この薬箱は私がちゃんと薬を飲んでるのか、幸治さんがチェックするためのもの。
前に飲みきれず捨てていたことがわかって……大変怒られたことがある。
一回分が仕切りで別れている。
朝は一日のうちで一番量が多くて、この一回分プラス、一日一回朝に飲む薬はまた別にある。
夜の寝る前に飲む薬もあるけど、とりあえず今は朝。
机にそれらを並べて全てあるか確認する。
「はぁ」
その量の、多さと今の満腹状態に、どこに入る余地があるのだろうと考えてしまう。
お母さんからコップに入った水を渡される。
薬を飲みやすく形ごとに分けて……口に放り投げ、水を飲み込む。
それを三回やったところで薬はなくなり、机に突っ伏した。
はぁ、苦しい……。
『今日は部屋で寝てろよ。』
そんなことを見られていたのか、幸治さんにすかさず声を掛けられる。
「はい……。」
『後のことはやっておくわ。またお昼に起きてれたら、ご飯食べにおいで。』
「すいません、お母さん。ありがとうございます。」
そうお礼を言って、リビングを出て私は寝室な向かった。



