「手、離して…」


電車の中はギリギリ座れないほどで、ドアの側に立っていると、握った手を涼真くんの方に引き寄せるようにしてくる。


「電車が揺れる度に転びそうだから」


からかうように言うけど、本当にそれだけが理由なの?


「大丈夫だよ」


「転んだら、ここでおんぶするからな」


パッと離された手を慌てて掴む。


「それはヤダ!」


涼真くん、本当にやっちゃいそうだから怖い。


「よっかかっていーよ」


「まさか!」


電車が発進して、車体がガタンと揺れる。


その勢いで涼真くんの胸に肩が当たった。


言ってるそばから早速やっちゃったよ…。


案の定、小さく笑う声が頭上で聞こえた。