良樹side
昔馴染みの仕事仲間は多分かなり変わっている。
僕自身はそう思っていないけど、おそらく一緒にいた時間が長いから、そう感じないのかもしれない。
昨日、オーナーであるガムがふらっと消えてふらっと連れてきた少女、ラムネが新しくTreatに入店した。
普通ならそんなこと、許されるべきではない。
だってラムネは未成年だもの。
親を探して、警察に届けなくちゃいけない。
でも、僕らはそれをしなかった。
何より、クッキーが真っ先にラムネの世話を行ったから。
何かしらの理由があって、クッキーはそれを了承した。
まぁ正直に言えば、その状況下に慣れていたせいでもあるけど。
ガムやクッキーが承認したのなら、僕達はなんだかんだで従う。
彼らがその道で間違ったことがないのを知っているから。
ジリリリリ...
目覚ましのアラーム音に気づいて起き上がる。
大きなあくびをしながらも服を着かえ、1階のレストランへと降りる。
赤褐色のレンガで主に造られた落ち着いた雰囲気の店の灯りをつけて、キッチンへと向かう。
そして僕は備え付けの冷蔵庫から必要な食材を取り出す。
僕のTreatでの仕事は主にシェフ。
つまり料理人だ。
知り合いが料理人ってこともあって、その資格を取った。
どちらかと言うと、昼間の方が職務時間が長いからクッキーが機転を利かせて、僕は夜は出ないことになっている。
逆に夜が主に職務時間のチョコは昼間は出ない。
クッキーは割り振りが本当に上手いんだよなぁ。
尊敬するほど、Treatの皆は個性や才能で溢れている。
きっとラムネにもその原石があるはずだ。
そういえば昨日、クッキー、ラムネに関して随分と執着してたなぁ。
過保護でお節介焼きなクッキーでもあんなに執着はしなかったし、ラムネに何かあるのかな。
かと言って僕が聞けるわけでもないしな。
苦笑しながら朝ご飯の支度をしていると、不意に店のドアが開いた。
ポ「あれ、ラムネ?早いね。寝なくても平気?」
ラ「は、はい。お、はよ、うございます」
ポ「おはよう」
ラムネは律儀にきちんと僕の方へと頭を下げる。
僕は微笑んでその姿を見守った。
見ている限り、ちゃんと礼儀正しい子だけど...。
家出ってわけでも無さそうだな。
なんとなくそんなことを思いながら、どうしたらいいのか戸惑っているラムネに僕は笑顔を向ける。
ポ「朝ご飯、ラムネのだけ先に作ってあげるよ。和食か洋食だったらどっちがいい?」
ラ「えっと...」
ラムネは驚いてキョロキョロと辺りを見回した。
その行動に違和感を覚えて、僕は首を傾げる。
もしかして...。
ポ「分からない?」
ラ「っ!?」
ラムネは一瞬だけビクッとした。
まるで怒られるのを恐れているかのように。
僕は息を呑んだ。
その悲痛な姿に。
こんなにも小柄な少女がまさか、和食と洋食の言葉を知らないなんて...。
ポ「和食は日本らしい食べ物のことで、洋食は海外らしい食べ物のことを指すんだ。じゃあ今日のラムネの朝ご飯は和食にしようか。魚、食べられる?」
ラ「さ、かな?...大丈夫で、す」
ポ「よしっ。じゃあ作るね」
思ったことよりも先にこの子に教えてあげようという気持ちが働き、僕は気づいたら話していた。
驚きと同時にこの子を放っておけないと思う気持ちが芽生えた。
なんとなくクッキーが執着していた理由を理解した。
ポ「そういえば、ラムネが早く起きたってことはクッキーはまだ寝てるの?」
ラ「は、い」
ポ「そっか。あ、そうだ。ついでにグミの分も作っておかないと」
グミは学生だから皆より起床が早い。
そのため、朝ご飯を先に作っておく必要があるのだ。
卵を取り出し、フライパンの上へと落とす。
焼き上がる音が響いて、辺りに少し焦げた匂いが回る。
ラムネは鼻をすんすん鳴らして、その匂いを嗅いでいた。
その様子がなんだかとても愛らしくて僕はフッと自然に笑っていた。
ポ「あ、知ってるかい?ラムネ」
ラ「?」
ポ「僕はここの料理を作る人でね、毎朝昼夕の食事を作ってるんだけど、皆好き嫌いがバラバラでいつも大変でさ」
ラ「ポ、ポテチさんが作ってるんですか?」
ポ「うん。ガムやグミ、キャンディは基本的に洋食好きで代わりにチョコやクッキーは和食好きなんだ。覚えておくといいよ」
ラ「ど、うしてですか?」
ポ「これから一緒に長い時間過ごすからね、その1人1人の特徴を覚えておくと生活しやすいんだよ」
ラ「そ、うなんですか」
ポ「ラムネはどっちが好きか、今度教えてね」
ラ「は、はい」
ポ「さあ、もう少しで出来上がるよ。適当に座っててね」
僕はグリルに入れた鮭の焼き具合を確かめながら、ラムネにそう言った。
ラムネは頷いて、近くにあったテーブル席に座った。
和食のメニューは焼き鮭に豆腐の味噌汁、ほうれん草のおひたし、卵焼き、白米と割とシンプルなもの。
反対に洋食メニューはロールパンにコンソメスープ、目玉焼き、生野菜サラダ、その他好みのジャムなど。
僕は作るのが好きだから、食べ物の好き嫌いはそうそうないけど、こうやって皆の好きなものを作って美味しい、って言って貰えることが何よりも嬉しいことなんだ。
昔馴染みの仕事仲間は多分かなり変わっている。
僕自身はそう思っていないけど、おそらく一緒にいた時間が長いから、そう感じないのかもしれない。
昨日、オーナーであるガムがふらっと消えてふらっと連れてきた少女、ラムネが新しくTreatに入店した。
普通ならそんなこと、許されるべきではない。
だってラムネは未成年だもの。
親を探して、警察に届けなくちゃいけない。
でも、僕らはそれをしなかった。
何より、クッキーが真っ先にラムネの世話を行ったから。
何かしらの理由があって、クッキーはそれを了承した。
まぁ正直に言えば、その状況下に慣れていたせいでもあるけど。
ガムやクッキーが承認したのなら、僕達はなんだかんだで従う。
彼らがその道で間違ったことがないのを知っているから。
ジリリリリ...
目覚ましのアラーム音に気づいて起き上がる。
大きなあくびをしながらも服を着かえ、1階のレストランへと降りる。
赤褐色のレンガで主に造られた落ち着いた雰囲気の店の灯りをつけて、キッチンへと向かう。
そして僕は備え付けの冷蔵庫から必要な食材を取り出す。
僕のTreatでの仕事は主にシェフ。
つまり料理人だ。
知り合いが料理人ってこともあって、その資格を取った。
どちらかと言うと、昼間の方が職務時間が長いからクッキーが機転を利かせて、僕は夜は出ないことになっている。
逆に夜が主に職務時間のチョコは昼間は出ない。
クッキーは割り振りが本当に上手いんだよなぁ。
尊敬するほど、Treatの皆は個性や才能で溢れている。
きっとラムネにもその原石があるはずだ。
そういえば昨日、クッキー、ラムネに関して随分と執着してたなぁ。
過保護でお節介焼きなクッキーでもあんなに執着はしなかったし、ラムネに何かあるのかな。
かと言って僕が聞けるわけでもないしな。
苦笑しながら朝ご飯の支度をしていると、不意に店のドアが開いた。
ポ「あれ、ラムネ?早いね。寝なくても平気?」
ラ「は、はい。お、はよ、うございます」
ポ「おはよう」
ラムネは律儀にきちんと僕の方へと頭を下げる。
僕は微笑んでその姿を見守った。
見ている限り、ちゃんと礼儀正しい子だけど...。
家出ってわけでも無さそうだな。
なんとなくそんなことを思いながら、どうしたらいいのか戸惑っているラムネに僕は笑顔を向ける。
ポ「朝ご飯、ラムネのだけ先に作ってあげるよ。和食か洋食だったらどっちがいい?」
ラ「えっと...」
ラムネは驚いてキョロキョロと辺りを見回した。
その行動に違和感を覚えて、僕は首を傾げる。
もしかして...。
ポ「分からない?」
ラ「っ!?」
ラムネは一瞬だけビクッとした。
まるで怒られるのを恐れているかのように。
僕は息を呑んだ。
その悲痛な姿に。
こんなにも小柄な少女がまさか、和食と洋食の言葉を知らないなんて...。
ポ「和食は日本らしい食べ物のことで、洋食は海外らしい食べ物のことを指すんだ。じゃあ今日のラムネの朝ご飯は和食にしようか。魚、食べられる?」
ラ「さ、かな?...大丈夫で、す」
ポ「よしっ。じゃあ作るね」
思ったことよりも先にこの子に教えてあげようという気持ちが働き、僕は気づいたら話していた。
驚きと同時にこの子を放っておけないと思う気持ちが芽生えた。
なんとなくクッキーが執着していた理由を理解した。
ポ「そういえば、ラムネが早く起きたってことはクッキーはまだ寝てるの?」
ラ「は、い」
ポ「そっか。あ、そうだ。ついでにグミの分も作っておかないと」
グミは学生だから皆より起床が早い。
そのため、朝ご飯を先に作っておく必要があるのだ。
卵を取り出し、フライパンの上へと落とす。
焼き上がる音が響いて、辺りに少し焦げた匂いが回る。
ラムネは鼻をすんすん鳴らして、その匂いを嗅いでいた。
その様子がなんだかとても愛らしくて僕はフッと自然に笑っていた。
ポ「あ、知ってるかい?ラムネ」
ラ「?」
ポ「僕はここの料理を作る人でね、毎朝昼夕の食事を作ってるんだけど、皆好き嫌いがバラバラでいつも大変でさ」
ラ「ポ、ポテチさんが作ってるんですか?」
ポ「うん。ガムやグミ、キャンディは基本的に洋食好きで代わりにチョコやクッキーは和食好きなんだ。覚えておくといいよ」
ラ「ど、うしてですか?」
ポ「これから一緒に長い時間過ごすからね、その1人1人の特徴を覚えておくと生活しやすいんだよ」
ラ「そ、うなんですか」
ポ「ラムネはどっちが好きか、今度教えてね」
ラ「は、はい」
ポ「さあ、もう少しで出来上がるよ。適当に座っててね」
僕はグリルに入れた鮭の焼き具合を確かめながら、ラムネにそう言った。
ラムネは頷いて、近くにあったテーブル席に座った。
和食のメニューは焼き鮭に豆腐の味噌汁、ほうれん草のおひたし、卵焼き、白米と割とシンプルなもの。
反対に洋食メニューはロールパンにコンソメスープ、目玉焼き、生野菜サラダ、その他好みのジャムなど。
僕は作るのが好きだから、食べ物の好き嫌いはそうそうないけど、こうやって皆の好きなものを作って美味しい、って言って貰えることが何よりも嬉しいことなんだ。

