ポ「つまり?」


ク「おそらくラムネはグミとそこまで歳は変わらないわ。けど、ラムネは歳に合わないくらいに無知なの。放っておけないのよ。だから少しでも何かに触れて歳に合う知識を蓄えて欲しいっていう私の願いなの」



私はラムネの素性に関することをあえて言わなかった。

言う必要性を感じなかったのもあるけど、勝手に自分の口から周囲の人間に広げてしまうのは何か違うと判断したからだった。



チ「クッキーの思惑は分かったが、俺は体力的な面であいつが持ちこたえられるとは思えねぇ」


ク「それについてはさっきも言ったけど、ラムネに無理をさせるつもりはないの。そうね、簡単に言うなら店番をしている看板娘くらいかしら」


ポ「それくらいならきっとできると思うよ。忙しい時間帯は限っているわけだしね」


グ「あの、ラムネは俺と同じくらいって言ってたッスけどあいつ、学校に行ってないんスか?」


ク「えぇ」


キ「まぁ今は無理して学校なんかに行く必要ないしね〜。その辺はボクらが学生の頃よりもずっと生きやすい世の中になってる気がするなぁ〜」



こう見えてキャンディは成人男性だ。



子供っぽい言動を少しでも改善すればその誤解は少なからず減ると思うんだけど...。



それはキャンディにとって地雷であることを理解している私は口を閉じた。



グ「学校なんかよりここの方がもっと有意義な時間が過ごせるのにさ」


ポ「そんなこと言ったらダメだよ、グミ。君はちゃんと勉強しなくちゃ」


チ「ポテチのオカンモードが出たぜ」


グ「やべ」


キ「ドンマイ、グミ〜」


ク「はいはい。それじゃあ昼間は私がラムネの面倒を見るから、夜は...そうね、グミ、頼めるかしら?」


グ「いいッスよ」


ク「ありがとう」


ガ「俺は寝る」



今まで一言も話もしなかったガムが辛抱切らしたかのように出、そそくさと階段を上っていった。



ガムにしては珍しくここまで会話にいたわね。



私は妙に感心していた。

多分それは皆も同じだろう。



チ「クッキー、いいか」



キャンディやポテチが明日の仕込みに取り掛かり、グミが自室へと戻ってしばらく経った後にチョコが私にそう声をかけた。



ク「どうしたの?」


チ「お前、ラムネに関して随分とアバウトにしてるよな」



なんでもないことなのに、チョコに言われるといつも心臓に悪い。

なんていうか、チョコは人を責めるような言い方で問いただすことが主。



まぁそのおかげもあって余計な客がつかないんだけど...。

仲間内にその言い方は控えて欲しいものだわ。



ク「それなり事情があるのよ。あの子だってまだ慣れに慣れていないのよ?自分のことをベラベラと話して欲しくはないでしょう」


チ「お前のその癖、相変わらずだな」


ク「何よ、別にいいでしょう?それに、あなたとはほぼ毎日会っているじゃない」



私はムッとした表情をチョコに向ける。



私は唯一昼夜跨いで働いている人間。

と言っても主に昼間をホールとして動いて、夜は裏方に周り、仕事をしているという感じ。

チョコは夜、バーテンダーとして仕事しているから顔を合わせないことがない。



チ「そーだな。俺が悪かったよ」


ク「あら、珍しく素直じゃない」


チ「珍しく、は余計だ。...昔を思い出しちまった」


ク「昔?」


チ「あいつ...ラムネは昔のガムに似てる」


ク「...確かにそうね」



遠慮がちに見えるその目にはくっきりと誰も信用しないような傷跡がある。

むやみに近づけば、その傷跡の鋭さで逆にこちら側が刺されてしまうほど。



本当にによく似ているわ。

...悲しいくらいにね。



私は夜風の入る窓を閉めた。