これは、友チョコじゃない

「そこに書かれているのが俺の気持ち」

「なんで……」

「ん? なんでって、バレンタインだから」

「だからって……本当に?」

「うん、奥田が好き」

真っ直ぐと向けられた瞳で言われる『好き』に私の心臓はドクッと大きく揺れた。

桃華が予想してしたとおりだ。本当に逆バレンタインだったとは……。


「あ、あの、えっと」

「うん?」


動揺で言葉がうまく出てこない。私もと伝えたいのに。

そうだ、チョコ!

絶対に渡すと決めていたチョコの存在を思い出し、急いでバッグから取り出す。


「これ、受け取ってくれる?」

「もしかして、友チョコ? 友達としか思えないっていう答え?」

「違う、友チョコじゃない。本命なの……岩井、いつも誰からのも受け取らなかったし、今日も好きな人からしか受け取らないって言ってたから、出す勇気がなかったの。でも、これは本命チョコだよ。私も岩井が好き」