もしかしたら、うちで扱ってる商品がここで使われているとか……今度誰かと来るための下見とか……かもしれない。

誰かって、誰よ? 岩井の好きな人?

自分で思ったことに自分で突っ込んで、気持ちを沈ませすぎる。


「どうした?」

「あ、ううん。いいレストランね」

「うん。藤川さんが結婚記念日に奥さんと行って、良かったと教えてくれたんだ」

「へー、藤川さんち仲良さそうだものね」

「うん、藤川さん見てると結婚っていいなと羨ましくなる」


岩井は優しく微笑んで、ナプキンを膝に置いた。なるほど、いいと聞いて来てみたくなったというわけね。藤川さんはうちの部の主任で、岩井とよく仕事を組んでいる。

素敵なレストランに私と一緒に来たいと思ってくれたのは嬉しい。余計なことを考えないで、ただ食事を楽しめばいいのかも。

仕事の話などをしながら、素敵なコース料理を堪能する。食通が藤川さんが薦めただけあって、どの料理も美味しかった。


「美味しかった。あとはデザートだよね。どんなのか楽しみ」

「うん、そうだね」