クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

昔、アンナの父コンラッドが現役で医者をやっていたとき、屋敷の庭師が刃物で腕を切ってしまったことがあった。そのとき、アンナは父がまるで魔法を使っているかのような手さばきで庭師の腕をあっという間に縫い留め、医学のことなどなにも知らなかったアンナだったが、その仕上がりを素直に綺麗だと思った。

「まだ痛んだりするんですか?」

「たまに痺れがあるくらいだ。化膿して腕を切り落とさなきゃならねぇなんてことにならなかったのは、ランドルシア随一の名医のおかげだな」

「名医?」

かつてコンラッドもそう呼ばれていた。優れた医者の揃う国だ、きっと父以上に腕利きの医者が大勢いるのだろう。そう思うと、アンナはいったいどんな人たちなのだろうかと想像せずにはいられなかった。

「おっといけねぇ、もうこんな時間だ。アンナ、すまねぇが寄宿舎に戻る前にこいつをレオン様のところへ持って行ってくれねぇか?」

「レオン様?」

きょとんとしていると、スープと乾燥させた肉の載ったトレーを渡される。