クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

必然と視線が合い、大勢の前で二人は誓いの口づけを交わした。わずかに身体を離し、唇を深紅に染めたまま、アンナは公衆の面前だということにハッとする。そして、照れくささに長い睫毛を伏せた。

「あの、ジーク様。ひとつお願いがあるんですけど」

「なんだ?」

こんなこと改めて言ってもいいのだろうか。と躊躇しつつも、アンナは思い切って口を開いた。

「私にジーク様のお食事を任せてくれませんか? まだまだ薬膳の勉強だってしたいし、それに――」

必死に懇願するようなアンナを見て、ジークはクスリと笑った。

「アンナ、以前私に食事を作って部屋で待っていたことがあっただろう? あのとき、私がなんて言ったか覚えているか?」

――お前はきっといい妻になるだろうな。男は胃袋を掴まれると、逃れられなくなるものだ。

ジークに言われた言葉は今でも忘れてはいない。一言一句覚えている。

「実は、あの言葉には続きがある」

「え? 続き?」

目を瞬かせていると、ジークがそっと耳朶に唇を寄せて囁いた。

「私もお前に胃袋を掴まれ、すべての虜になったひとりの男だ」

国民の前では凛然とした国王ではあるが、アンナの前だけでは男なのだ。それを意識させられ、ドキッと胸が打つ。