クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

ジークの言葉の意味は理解できても、頭に入って来ない。呆然としているとジークはアンナの手を掬いながらその場に傅いた。唐突に国王が跪いたことで、周囲の人々がどよめいて一斉に注目する。音楽隊の手もぴたりと止まった。

「アンナ、婚儀を交わし、私の正妻になって欲しい」

「ジーク様……」

目の前のジークの青い双眸には、信じられない面持ちの自分の姿が映っている。突然のことで言葉に詰まっている間にも、ジークの愛の告白は続く。

「愛する女性はお前だけでいい。生涯お前を守り抜き、私は今後、ほかに誰も娶らずにお前だけをずっと愛し続けると誓う」

そう言い終わると、ジークは清々しいほどの晴れやかな笑みを浮かべた。

仕事を失い、奈落の底で悲嘆に暮れていたアンナだったが、幸せの絶頂はあまりにも唐突に訪れた。
なにがなんだかわからず混沌とする頭の中で、身も震えるほどの幸せが徐々に身体の芯まで染み込んでくる。自然と目頭が熱くなり、ぼやける視界を止められない。

「はい……こんな私でよければ、喜んでお受けいたします」

ジークの情熱を身に受け止め、アンナがこくんと頷いて答える。

「アンナ、では、左手を」

アンナは言われるがまま左手をジークの前に差し出すと、まるで壊れ物を扱うかのように手を掬われる。すると、ジークが懐から何か取り出し、アンナの薬指に黄金の指輪をスッとはめた。