クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

考えてみれば、ベアトリクスに攫われ自分のせいでランドルシア王国の全兵のみならず国王を出動させる失態を犯した。たったひとりの庶民のために事件になってしまったのだ。アンナの顔から完全に笑顔が消え、自然と俯き加減になる。

「すみません、私……ダンスなんてしてる場合じゃなかったんですよね。とんでもないことをしてしまったというのに……」

「おい」

「すごく反省してます。もう今後あんなことがないように――」

ジークの傍にいたい。まだ、城で働きたい。ここを追い出されたら、自分はトルシアンに帰るしかなくなる。

切羽詰まったように懇願しようとすると、ジークがアンナの両肩に手を載せ視線を合わせた。

「アンナ、お前、なにか勘違いしていないか? ああ、そうか……私の言い方がまずかったのか」

「え?」

きょとんと目を瞬かせていると、予想外にもジークが微笑んで言った。

「誤解を招く言い方をしてすまない。調理場で働く必要がないと言ったのは、お前がランドルシア王国の王妃として私の妻となるからだ」

「つ、ま……?」