ランドルシア国王の存在に皆が気づき、「国王様のお相手の方はどなた?」「まぁ、美しい王女様だこと……」と人だかりからそんな囁きが聞こえてきた。

「あ、あの……私、ジーク様に恥をかかせないようにちゃんと踊れているでしょうか?」

ステップを踏むたびに躓いてしまいそうになるが、ジークはアンナの動きに合わせて自然に身体を揺らしている。

「ああ、上出来だ。なにも問題ない、緊張するか?」

「しますよ、みんなこちらを見てるんですもの」

浴びせられる視線から逃れたくて、思わず顔を伏せてしまいそうになる。

「ふっ……見せつけてやればいい。私は、お前がランドルシア国王のものであると、声を大にして言いたいのを必死に抑えているけどな」

ジークが冗談めいてわざと耳元で囁く。すると、アンナはそれに気を取られてうっかり足を踏み外してしまった。

「きゃっ……」

「おっと、足取りが少し早かったか?」

「ち、違いますよ、ジーク様が……あれ?」

ふと、ジークの背後の向こうに、見覚えのある姉妹が食事などの給仕をしているのに気がついて、アンナはダンスの足を止めた。