想いが通じ合ってからというもの、毎晩のようにジークはアンナを愛で、抱いた。耳元で囁かれる愛の言葉が次々と蘇ると、無意識に顔が真っ赤になってしまう。

「その髪飾りをして、こうしてみるとアリシア様を思い出します」

「へっ!? 」

侍女の声に甘美な回想が弾け飛び、アンナは咄嗟に顔を上げた。

「国王様の母上様ですよ」

「え、ええ……存じ上げているわ」

アンナの髪飾りはジークの母、アリシアの物だとベアトリクスが言っていたのを思い出す。

「私はアリシア様の専属侍女でした。だから、その髪飾りのことも知っているんです。国王様の寵愛される方に受け継がれて、さぞアリシア様もお喜びになるでしょう」

涙ぐむ侍女に、アンナもしみじみとした心境になる。この髪飾りは自分にとっても大切な物だ。

「私も、嬉しいわ」

(アリシア様に恥じないような振舞いをしなきゃ……でも、私は庶民よ、こんな王女様みたいな恰好は今夜が最初で最後なんだから……)

いまだに夢見心地でいると舞踏会が始まったのか、どこからともなく音楽隊の奏でる軽快な曲が聞こえてきた。そのとき。

「アンナ、準備はできたか? 入るぞ」

「は、はい!」