「隠すな、お前のそんな表情を見ることができるのは、私だけなのだから」

覆っていた手をやんわりと解かれると、アンナは揺れる瞳でジークを見つめた。

「お前のいない世界など考えられない……お前は私にとって、最高の女だ」

「ジーク、さま……んっ」

性急に近づいてきた唇が再びアンナの唇を奪った。なにもかも食らいつくすような雄々しい口づけに、ずっとずっと望んでいたものがようやく手に入った多幸感に満たされる。
熱い愛撫を求め、すべてを奪い去って欲しいという潜められた欲求は、言葉にしなくともジークにはお見通しだったのだ。

「私を、ジーク様のものにしてください……」

アンナはこの身を捧げる思いで覚悟を決め、ジークの首に腕を回した。

「アンナ、愛している……私のすべてを受け入れてくれ」

うっすらと額に汗をかき、荒い息をついているジークは煽情的だった。見ているだけで身体が疼きだす。

「あ、っ……!」

本能に支配された獣のように、快楽だけを赤裸々に求めた。

「アンナ、大丈夫か?」

低く、心を蕩かせる声。いつの間にか固く閉じていた瞳をゆっくりと開けると、そこには情欲を隠しもせず、まっすぐ自分を見つめるジークがいた。

胸の奥がぎゅっとなる。こんなにも愛し、熱い眼差しを向けてくれる人がいる。それがどうしようもなく嬉しくて目尻から熱いものが零れ落ちる。

「……は、い」

この快感の絶頂を自分と同じように味わっているだろうか、とろけるような感覚をジークに与えたい。と、そんな欲望で今にも理性が吹き飛びそうになった。

互いの乱れた呼吸が恥ずかしくてたまらないのに、なんとか抑える余裕すらない。もはや喘ぐことすらできず、強く目を閉じたまま与えられる快感に酔いしれた。

気持ちいい。気持ちよくておかしくなりそうだった……もう、なにも考えられない。

「愛してる、愛している、愛している……」

繰り返される甘美な愛の囁きに心地いい眩暈がする。
ぐずぐずになった身体はまるで力も入らず、ただ互いの愛を確めるように何度も何度も唇を合わせた。狂おしいほどの抱擁と口づけに、幸せの足音を聞きながら、アンナは永遠の温もりに溺れた――。